『社会福祉士』相談所としての約束

専門的援助関係

 当事業所とクライエント(お客様)との関係は、『専門的援助関係』に基づくものです。

 難しい言葉を使ってしまって申し訳ありません。つまり、「クライエントお客様目的を達成するための関係」ということです。その目的というのは、例えば、「介護保険サービスを活用して、自立した生活をしたい。」であったり、「メンタル面での落ち込みや孤独・孤立感が強いので、その苦しさを和らげたい。」であったり、クライエント(お客様)によって、ひとりひとり異なると思います。

 もし、クライエントの目的が「介護保険サービスの活用」であったなら、当事業所職員は、介護保険制度の説明や、利用するサービス種別についての助言、利用のための手続き方法をお伝えしたり、場合によっては手続きの同行支援等を行います。

 また、クライエントの目的が「メンタル的な苦しさの緩和」であれば、ゆっくりと時間を掛けてお話をお聞きしたり、より慎重に言葉を選びながらお伝えする、というような対応をさせて頂きます。場合によっては慌てて他の制度等に繋いだりすることを避け、当事業所職員との関わりを積み重ねていくことを重視するという対応を取る場合もあると思います。

 いずれにしても、「今回当事業所に相談に来て、道が開けた。」とか、「相談前より気持ちがラクになった。」とか、「クライエントの目的の達成に近づく」ための時間になることを心掛けた対応をさせて頂きたいと考えております。単純に、「お話出来て楽しかった♪」というような、「友だち」的な関係ではなく、「クライエントの目的達成のための支援機関」であることを常に意識した関わりをさせて頂きたいと決意しております。

常にクライエントご本人の味方

 例えば、要介護高齢者の方を支援させて頂く際に、「ご本人は住み慣れた自宅で生活を継続したいと希望しているけれど、家族は施設入所を希望している。」とか、ひきこもり状態の方を支援させて頂く際に、「家族は頑張って就労(や就職活動)してほしいと望んでいるけれど、ご本人はまだ自信が持てない(或いは就労をしたいと考えていない)」と思っているというような状況に直面することがままあります。

 そんなとき、当事業所は常にクライエントご本人の味方でありたいと考えています。ただ、誤解しないで頂きたいのは、「クライエントご本人の希望通り。家族の希望は考慮しない。」という意味ではありません。

 まず、第一に今のクライエントの希望を叶える方法から考え始めるということです。要介護高齢者の例であれば、まず、自宅での生活を継続できる方法を考える。ひきこもり状態の方の例であれば、まず、就労以外で将来に渡って生活を継続できる方法はないかということを考える。そして、それを当事業所と、ご本人、そしてご家族も交えて共有します。間違っても、最初からクライエントの説得に掛かるようなことは行いません。

 そのうえで、クライエントの希望を叶えることが、クライエントの安全面や、費用的な問題、その他諸々の要素を総合的に考えてどうしても難しい場合は、ご家族の希望や、ご家族がそう希望される理由を改めて確認したうえで、また同じように、それを当事業所と、ご本人、ご家族も交えて共有します。

 そういった過程を丁寧に繰り返し積み重ねていって、最終的に、ご本人、ご家族、当事業所が納得した上で、満場一致で、「私たち(この方の支援方針)は、これで行きましょう!」となることを目指します。相応の時間を要してしまうかもしれないけれど、結果的にそれが、長期間ご本人が満足・安心・安定して生活を継続できることになり、ひいては家族の安心感や気持ちのゆとりにも繋がると信じています。

クライエント自身の不利益や他者の権利の侵害が想定される場合には、クライエントの行動を制限する場合があります。

願わくばあってほしくはないことですが…。例えば、クライエント(ご本人)が、「生きていくのが苦しいから、自殺したい。」であったり、「自分を虐めた相手に報復したい。」というような希望を持っている場合、「良いですよ。あなたの希望を尊重し支援します。」とは、断固として言って差し上げることはできません。当事業所は全力で止めますし、場合によっては妨害させて頂くこともあるかもしれません。

 また、もう少し現実的な例として、いわゆる「ヤングケアラー」や「老老介護」のケースで、介護家族が、「自分の身体のことや負担感を度外視してでも、自分が家族の世話をしたい。」と望んだ場合も、「気持ちは解るけれど…。介護サービスを利用するべきです。」と強く勧めたり、はっきりと「その意見には賛同できません。」とお伝えすることもあると思います。

 当事業所の願いはひとつ。当事業所を利用するクライエントやご家族が、自分のことも、家族も含めた周囲の方のことも、同じように大切にしてほしい。自分や周囲の方の命や心身、幸せを求める権利を粗末にしてほしくない。それだけです。

※当事者を支えるご家族やご友人・地域の方等にお願いしたいこと

 本来支援は、当事者ご本人が自らの意思で希望して受けるものです。

 しかし、社会福祉の支援では、

  ○ご家族が、「ウチの親が認知症で…。」と、相談に来られる。

  ○ご家族が、「知的障害のあるこどもの”親亡き後”が心配で…。」と相談に来られる。

  ○職場の上司等が、「ウチの社員、どうも発達障害のようなのだけど…。」と相談に来られる。

  ○お友達が、「私の友人がひきこもり状態なのだけど…。」と相談に来られる。

 というようなことがよくあります。本来、個人の障害名や病名等の要配慮個人情報をを本人以外の方から取得するということは、社会福祉士相談所としても、個人情報取扱事業者としても好ましいことではありません。

 そういった場合は、可能であればご本人の同意を得た上で、ご本人と一緒にお越し頂ければと思います。もし、ご本人が当事業所まで来ることが負担な場合には、訪問支援のご相談にも応じます。

 そして、最も好ましくないのは、ご家族や周囲の方が『ご本人に黙って』(勝手に)相談に来られることです。

 ご本人を心配するお気持ちはよく解ります。でも、最終的に支援を受けるのは、『ご本人』です。ご本人に黙って、相談・手続きを進め、サービス利用が決定してしまったら、ご本人は、支援を受ける前から、「こんな支援、受けたくなかった。周りに勝手に決められた。自分の気持ちを聴いてもらえなかった。」という、大きなマイナス感情を抱えた状態で、支援を受けさせられることになってしまうかもしれません。結果として、ご本人にとって「もの凄く大きな余分な」荷物を背負わせて苦しめてしまうことになってしまいかねません。

 とはいえ現実には、どうしてもご本人が支援を受けることに同意してくれないということもあると思います。そんな時は、ご家族等だけで相談に来られても良いと考えています。でもせめて、「(あなたが支援を受けたくないという気持ちは解かったけれど)私は家族(等)として、あなたのことがとっても心配。だから、とりあえず私だけで相談に行ってくるね。」とご本人に伝えたうえで、お越し頂きたいです。

 「自分にとって身近な人が、自分のことを心配してくれている。」この事実が、きっといちばんご本人にとっての救いになると思います。でも、想っているだけではなかなか伝わり辛かったり、伝わっているけれど、どこかで疑ってしまったり…とかあるものです。どうか、その気持ちをそのまま言葉にして、しっかりと伝えてあげて下さい。そしてもし良かったら、当事業所も、あなたの大切な方のことを一緒に心配させて下さい。一緒に考えさせて下さい。一緒にご支援させて下さい。

 また、様々な疾病や障害・特性を有しているとどうしても、周囲の方との距離が近くなり過ぎ、「私は私。あなたはあなた。私とあなたは違う。」ということを(理屈では解っていても)実感として理解することが難しい場合も多いかもしれません。「あなたは支援を受けたくないと思っている。だけど、私は、あなたのことをとっても心配している。」ということを、言葉に出して丁寧にお伝えすること自体が、結果として支援になることもあるかもしれません。

 

 

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